1 思うことは自由だと思う



 俺が、初めてアイツと会ったのは、小学生になりたての時。
 弥瑛の西校は、すでに小学部から寮生活が決まっており、そういう連中は異端の能力を持った《組織》の子飼いだと、全員が知っていた。
 親から離されて泣くしかできない時代。まだまだ甘えたくて、世界が広いことは知っていても、まだまだ自分だけの世界を持ち続けていた、子供時代。
 それでも《組織》の決まりに諾々と従い、大人の言葉に従情だった。

 それだけ世界に絶望し、暗い影を見付けてしまい、《組織》の中でしか楽園は存在しない。

 今から思えば、それが《組織》のやり口だったんだろうと思う。
 それがやっと解った年になっても、すでに身についた習性は消せず、今だに《組織》に身を阿る生活。逃れたくても、長年付き合う友人たちや建物は懐かしく、家族同然。
 逃れる、という感情すら、自分たちには用意されていない。
 それだけ用意周到な計画。巧妙な罠。その遠大さ。

 《組織》の隠れ蓑である弥瑛学園は、とても居心地がよくて、どうしようもないぐらい、性に合っている。

 それもこれも、アイツに会ったからだと思う。
 小柄で、細くて、色白で、まるで女の子みたいに可愛かった男の子。
 初めて見たときは、女の子だと間違えたし、しかもそれを声に出しちゃってたから、アイツにも聞こえていて。
 外見は守ってあげたくなるような、か弱い女の子なのに、一皮剥けばガキ大将顔負けのパンチでもって「女の子」発言してくれた俺を殴ってくれた。
 その後は何度も喧嘩して、寮を飛び出したり、仲直りしたり、コンビを組み始めたり・・・・特別な目で見るようになったり。

 普通じゃない学校と、普通じゃない仲間と、普通じゃない俺とアイツ。
 なのにそこらの一般人と同じような恋心はとても切なくて。でもやっぱり俺らは普通じゃないから、男同士でも変じゃないと言い聞かせる。

 好きだと言い聞かせて数年。
 手ごろな返事を貰えて二年とちょっと。

 今度ははっきりした返事が欲しいって、思うのは勝手かな。



     

+まえがき+

 俺「立花要」アイツ「有須川透」で送ります。
 実はイケメン5やトドロッキーよりも歴史が古い彼ら。初登場です。

H16.12.05

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