日本で唯一財閥として名を持つことを許された、堂本財閥。
 ここでは月に1度、朝食争奪戦が行なわれる。
 すなわち・・・・、
「誰だっ!俺の卵にケチャップかけたやつぅっ!!」
「ああぁぁぁっ! 俺は、朝は珈琲だって、言ったじゃんっ」
「醤油とって、醤油っ!」
 こんな状態であり、唯一まともな人格者だと思っている有沢くんは、
  「ああ ――― 、もうっ! 朝飯ぐらい静かに食えよっ!!」
 しかし誰も聞かず・・・・否、聞こえず、
「要ちゃん、あたしにもオレンジジュースとってっ!」
「透! 寝ながら飯食うの止めろっ。どっちかにしろっ!」
「ああぁぁっ! 真琴っ、俺の飯に変な粉かけんなぁ! 人を実験にするなって何度も言ってるだろっ」
「Zzzzz・・・・」
「りょう、何床で食べてんだっ!? ちゃんと席につけっ」
「頼むから静かに食べてくれよぉ・・・・」
 有沢りょう以外にも静かに食べている唯一の有須川透は、寝ているのである意味一番行儀が悪い。
 唯一の女の子である砂原唯香は、男には負けられないとばかりに騒いでいる。
 唯一橘流後継者の立花要は、ここでは一人の男の子になっている。
 唯一年下で、無口な工学者である三木乃真琴は、実験を称して辺りに騒ぎを撒き散らしいる。
 いつもの朝が、そこにあった。


「ああ、もう、毎回毎回何で落ち着いて食べられないかなぁ!?」
 朝食の時間が終わり、5人はティタイムに入った。
「いや、実は俺もそう思ってるんだよ。なぁんかさ、食べ終わるといつも疲れてさ。次からはもっと注意しないとなぁって」
「だろっ? なのに何でそれが出来ないんだよ・・・・っ」
「お年頃だからじゃないの。男の子って、食べ盛りよね」
「それ、どっちも違う」
 唯香の言葉に、右隣に座ってた真琴が静かに反論する。
 朝食を摂って血糖値を上げたのか、やっと起き出した透も左隣で珈琲を飲みながら肯いている。
「そうだよな。年頃ならもっと周りの視線に注意するし、食べ盛りはもう、終わっただろ」
「ああ、だから真琴ちゃんはその身長で止まっちゃったのね。あたし、変な薬のせいだと思っていたのに。なぁんだ、そっか」
「・・・・・・・・・・」
 唯香の冷たい言葉に、真琴の頬に冷汗がツツーと流れる。
 何事にも動じない真琴も、これには衝撃を受けた。透もなぜか衝撃を受けている。
「唯香、唯香。真琴も透も同じ身長なんだぜ。165センチ」
「あたしと一緒よね。要ちゃんったら、いつ透ちゃんの身長なんて知ったの?」
「健康診断、一緒に受けただろうが。受けてないのはりょうとお前だけ」
「・・・・・・やっぱ、受けないと駄目か?」
「りょうは良いよ。だって、小学校以来でしょ。もう、やっても無駄だよ。無駄。それに違う高校いっちゃうしー」  唯香の言葉にりょうは安心する。
「それよりさ、なんか、面白いことない? 珍しく今日は体育の日でお休みよ」
「んん・・・・。何もないっ」
 要の一言に、唯香がソファからすべる。
 透がそれを横から支える。
「ありがと、透ちゃん。真琴も、紅茶、受け止めてくれてありがと。でも変な粉を入れるのはめて。匂っちゃってるし、色も変わっているよ」
「うぅん。失敗か。珈琲だとうまくいったんだが・・・・」
「「コーヒー・・・・」」
 珈琲を飲んでいた透とりょうが、顔色を変えて珈琲を睨んでいる。
 唯香の紅茶 ―― レモンティ ―― は、綺麗な透明色から、ミルクを入れたように白く濁っいる。
「もう飲めないよ、この紅茶。まったく・・・・」
「おい、それよりもこの珈琲・・・・、大丈夫なのか。人害ものとか・・・・・・」
「大丈夫だ。それはただのカフェオレだ。それにこの粉はただのミルクで、人害でも何でもい」
「み、みるく? じゃ、これはミルクティになるわけ?」
   恐る恐るといった感じで、紅茶に口をつける。
 確かにミルクティの味がする。しかし、ミルクティにしては匂いが変で、しかも、無性に甘い。甘過ぎる。
「ミルクだけじゃないでしょ。他に何が入っているわけ」
「米だ。米を発酵させて、入れている。砂糖を入れてないからダイエットにいいと思ったのが。他の女の子たちにも頼まれていてな」
「・・・・・・人を実験体に使うなって。それにしても、米?米でもさ、発酵させると酒になるでしょ。やっぱその分、コレストロールが溜まるんでないかい?」
「そこらへんの細かいことはわからん」
「さいでっか。ま、あたしも良くわかってないけど」
 今度はゆっくりと、深く、ミルクティなるものを味わう。
 正真正銘、ミルクティの味で、甘党好きの女の子達には良いかもしれない。
「うん、結構、良いかもしれないね。真琴にしては良いもの作ったね」
「いつも爆発させてるもんなぁ。それよりさ、お前ら、この前の記憶、戻ったのか」
―――― まだ、です」
「誰も何も言ってこない。いつものことだから、気にもしないんだろう」
 唯香と真琴は溜息を一つ吐く。
 いつもと違うから、困っているのだとは、他の奴らには絶対に言えなかった。
「そういや、篤がいないな。あいつは今回、どうしたんだ」
「・・・・・・いや、溜まっている仕事片付けるらしいよ、うん」
「・・・・・・・・・・」
 この質問も今や、二人にとっては禁句だった。
 何故ならこの前の実験に、関わっているからだ。
 詳しく言うなら半年前の5月、すべてはここから始まったのだから。
 半年経っても終わらない仕事を押しつけてしまった唯香と真琴はもう、黙って噂に身を委ねるしかない。しかし、居たたまれないのも事実だ。自然に見えるよう、話を逸らした。
「あーあ、暇だねぇ。今日はゆっくりと昼寝でもしようかなぁ」
「それも良いな。みんなで雑魚寝でもするか?」
「雑魚寝するような部屋はないよ。何処もちゃんとした部屋だからね」
「テレビ室は? あそこなら寝れるだろ。映画館並みの画面だから、絨毯もふかふか」
「お、それいいね。よっしゃ、それにケッテーイ」
 それぞれ立ちあがると、片付けを家の者に任せ、部屋から出る。
 堂本財閥のある一室。ある一日は、たいていこのように過ぎていく・・・・・・。


 ―――― 一部を除く?



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+あとがき+

 告白シリーズのその後、です。
 お題なんだけど、続き物でもあるから、こっちにUPしました。

07.02.04

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