尊敬する人


「今日は風が強いな・・・・」
「だから君という荷物もちがいるんだよ、立花くん」
 奇妙にアルトな声で断言してくる砂原唯香。その少し後ろでは立花要が分厚い紙袋の束を二つ、抱えて歩いている。
 砂原の手にはメモ用紙を張りつけた扇子がある。
 彼女は常に扇子を持ち歩いている。そして何かあるごとにそれを取り出して、指代わりに扱い、カンニングペーパーに使い、時には武器と化す。
「少しはお前も持てよ」
「ピアニストの指に向かって何を言うか」
 ビシ、と扇子を閉じて立花を差す。
「その喋り方もヤメロ」
 それに選択授業でピアノ選んだだけだろうが、とぼやく。
「失敬な。もともとがコレがベースだというのに」
「お前はさ、丁寧すぎる言葉使いで相手を翻弄するのがいちばんイキイキしてるよ」
「どういう意味かね、それは・・・・」
「これでも尊敬してるってことだよ」
「ならいいがね・・・・」
 そして二人は次の店に入り、時間が立ってから砂原は、うん? と首を傾げた。

「お前、やっぱ馬鹿にしてる?」
「そういうしつけーとこも尊敬してます」
「お前の言い方は気にくわん」




+あとがき+

 弥瑛学園西校シリーズ単品。
 この二人の友情というか、会話というか、好きなんですよね。

05.10.29

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