風邪をひいた日



 ステファン王国は、年がら年中涼しい気候で、穏やかに過ごしやすい。
 しかし夏の日本からいきなり召喚された菫は、見事に気候の変化に付いていけず、風邪をひいてしまった。
「姫さま。ハチミツを溶かした薬酒です。喉に効きますわ」
「何か欲しいものはございますか?」
「新しい寝着に着替えましょう」
「氷をお持ちしましたわ」
 その献身的な看病は、忠実忠実しいというより、申し訳なく思う。
 菫が熱を出したのがそれほど驚いたのか、何をしていいのか判らないとでも言うように、何から何まで甲斐甲斐しく面倒を見てくれるのだ。
 シオンもお見舞いに来てくれたし、あのファレルだって花を携えて訪ねに来た。
 これには菫が驚いて、熱が上がったほど。
「姫さま。早く良くなって、出掛けましょうね」
―――― うん」
 うん、そうだね。
 私も早く、心配そうな顔とかじゃなくて、みんなの笑顔が見たいから。




+あとがき+

 第2章、馬で遠出する前の話でございます。


06.01.15

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