掃除
「愛は地球を救うって言うでしょ?」
「言うな」
とつぜん言い出した彼女に、彼は逆らわない。いつもの事だからだ。
「私ね、それ、間違っていると思うのよ」
「そうか?」
「そうよ! だって『愛 』 イコール『金 』 ! 金で世界は救えないわよ」
「―――― そうか?」
確かに犯罪の影には金と女が関わっているが。
愛=金という発想からして判るような、判らないような。
「愛にも色々あるわ。友情や、家族愛とか」
「ああ、うん。なるほど。守るものがあると保守的になるし、そのためには金は必要だよな」
「そうなのよ。だからね、地球は愛じゃなくて、恋で救うんだと思うのよ」
「―――― で、そのこころは?」
「若者の恋に走った無謀で馬鹿な行動力、もとい恋力でしか全世界は救えないわっ!!」
「―――― 余計な混乱を誘うだけでは?」
「守るだけじゃ何も出来ないのよっ! 動かなくちゃっ!!」
「なるほど。つまり、恋の力で突っ走った結果、俺のパソコンを壊してしまったと?」
部屋の奥。黒いノートパソコンがデスクから落ちて半分に割れている。画面にもヒビが入っており、コードだけは繋がっている。
「そ、掃除していただけなのよ! あなたに恋してなきゃ掃除なんてしないわよ!!」
「弁償な」
「不可抗力よ!!」
「世界は救わなくていいから、明日から俺の仕事を手伝え。な?」
「・・・・・・はーい、ごめんなさーい」
ようやく謝った彼女に、彼氏はひとつため息をもらす。
「まったく・・・・」
口からよくもあそこまで紡げるものだ。
終
+あとがき+
ギャグにしたかったんだけど・・・・・不発でした。
06.02.26
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