担任である理科担当の仲間先生と、その生徒である石倉七海の関係は半年前から始まる。


悪夢のような


 最初、それは接触から始まった。といってもセクハラではない。肩に手を置いたり、背中を叩いたり、ごく普通の教師と生徒の触れ合いである。
 しかしそのうち、七海にだけ特別扱い的な触れ合いが増えた。係の仕事で準備室に行けば頭を撫でられたり肩を組まれたり。自分でも問題だと思うけど、最初はそれを変に思わなかった。スキンシップの多い先生なんだなと良い方に納得していた。
 しかしある日、七海は先生に呼ばれ、放課後に準備室に向かった。先生は外で待っていて、七海が来ると社会科準備室まで誘った。七海はここまで来ても変に思わなかった。なにせ彼女の歴史の成績は下から数えたほうが早い。その説教が待っているのだと、嫌々ながらも素直について行った。
 おかしいと思ったのは準備室に着いてから。先生は静かにするよう指示して、扉を薄く開いて中を見るように行った。不思議に思いながらも言うとおりに薄っすらと開いた扉の隙間を覗き込む。

―――――― っ!!」

 驚いて身を引き、声をあげようとした。けれど後ろで待ち構えていた仲間先生が口を手で押さえ、そのまま部屋の中に一緒に入った。
 そこにいたのは社会科担当の宮城先生と、顔の知らない女子。女子はスカーフで目隠しをされて、先生の前で膝まづいていた。
 宮城先生はこっちに気付くと、大胆に脚を開いた。そこでやっと全てが見せ付けられる。
 女生徒が宮城先生の屹立したモノを美味しそうに咥えていた。目隠しされているのに、嬉しそうだと七海には分かった。男の人のモノを見るのは初めてだし、そういう行為を見るのも初めてだ。だから七海はパニックになりながらも逃れようと抵抗するが、先生の腕は背後からきっちりと捕まえており、動くこともままならない。
 だから目蓋を閉じれば、先生は耳元でちゃんと見なさいと言う。無視すればスカートに手を入れられ、太腿を撫でられた。手が上に上っていくのが分かり、慌てて指を伸ばせば、「言うことを聞けば何もしない」と言われ、仕方なく二人の行為を見る羽目になった。
 女子は手と口で必死に奉仕している。彼女はこちらに気付いていないのか、咥内のものに没頭している。次第に七海も没頭しはじめた。その手の行為には人並みに好奇心や知識もあったし、観察めいたことをしていた。
 そのうち宮城先生は彼女の口の中で達した。彼女は必死に飲み干し、零れたものも指ですくって舐めた。赤い舌がいやらしく動く。それから先生は彼女の眼を隠していたスカーフを取った。彼女は恍惚とした表情で、物足りなさそうに舌を出している。
「もう帰っていいぞ、坂下」
―――― はい、先生」
 坂下と呼ばれた生徒は立ち上がり、名残惜しそうに宮城先生を見つめた後、デスクの上のバッグを掴んだ。そこで扉にいた仲間先生と七海に気付き、動きを止めた彼女だったけれど、何かに気付いて、七海に向かって微笑み、先生に頭を下げて出て行った。
 それが友人、坂下優子との始まりで、七海と仲間先生との始まりで、お互いに秘密を抱える同士になってしまった。

+++++++++++++++++

 「俺の受け持ちクラスで、しかも担任で、この点数ねぇ・・・・」
 理科の教師、仲間省吾が一枚の答案用紙を眺めながら、ちらりと生徒の一人、石倉七海を見た。
 中間試験明け、理科係の彼女が次の授業の用事を伺いに理科準備室に伺った際、特別にと見せられた答案用紙の名前部分。そこには真っ赤なゼロの数字がある。
「名前の記入忘れ。最初に名前を書くよう、しっかりと言ってあったはずだが?」
 確かに言われた。けれど、前日に睡眠時間を取れなかった彼女は睡魔に襲われている最中であり、名前よりもまず解答を、という状態であった。
 しかもそれは、先生がもっとも知り尽くしているはずなのだ。
「石倉。聞いているのか?」
「んん」
 答えられない。絶対に口を離すなと最初に命令された。きちんと返事するためには口を離さねばならない。でも先生のことだから、きちんと返事しなくっても文句を言って来る。
「聞こえなかったぞ、石倉。零点は嫌だと言ったから、こうやって猶予をあげているのに」
 先生が前髪を掴んできた。生え際にはうっすらと汗が浮いている。眉は苦しそうに潜められ、頬は息苦しさに赤く染まり、口元は厭らしく濡れている。
 先生のスラックスは前の部分だけが広げられ、そこから先生のものが岐立しており、七海はそれを咥えさせられている。頭を上下に動かし、何度も舌を這わせ、先生が達ってくれるのを待っている。
「ほら石倉。休み時間が終わるぞ。早くしないと次の授業で零点を発表するぞ」
「んん、ん、ん」
 顎が疲れてきたが、それでも必死に七海は先生の足にすがり付く。傍から見れば自分から欲しているように見えるだろう。口の中は苦いし、何よりだるくて何度も呻き、嗚咽を出すけれど先生は無視する。もう何度もさせられている行為だし、学校の中では毎日、やらされているから、先生は手加減もしてくれない。
―――― ちゃんと飲めよ」
「ふ、んっ」
 手の中で重量が増した。先生は少しだけ腰を押し付けてきた。そして七海は口の奥深くそれで受け止めた。零さないよう、必死に飲み込む。すんなりと喉を通っていくものではないけれど、落ち着いてやれば飲み干せる。
「ん・・・・」
 鈴口にも舌を置き、残ったものも飲む。そして丁寧になぞり、清めていく。そこでやっと終了。先生が立たせてくれて、ウェットティッシュを差し出してくる。七海は一枚取り出して口元を拭う。本当は洗面所でうがいしたいけど、先生は絶対にそれを許さない。蛇口から直で水を洗いたい欲求を抑えて、七海は拭いた後のウェットティッシュを足元のゴミ箱に捨てた。
「石倉」
 びくりと身体が震える。これだけは、まだ慣れない。慣れたくない。でも先生は、これが好きなんだ。
 俯いたままでいたら無理やり顎を掴まれて、顔を上げさせられる。顔を背けようとすれば、さらに顎を掴んだ手に力を込められ、先生が口付けてきた。咥内にはまだ先生の匂いが残っていて、この状態でキスするのがすごく嫌だった。でも先生は必ず最後にこれをしてくる。
 舌が唇をこじ開けて進入してきて、絡め取られる。気持ち悪くて仕方ない。呼吸だってままならない。
「うう、やぁ・・・・んんっ」
 すごく嫌だ。さっきまで先生のを咥えていたのに。そこで先生の唇を受けるなんて、すごく気持ち悪い。何でこんなこと、させるんだろう。先生の方が嫌に決まってるのに。
 先生はきっちり一分ぐらい七海が嫌がるさまを堪能してから手放してくれた。
「石倉。今回だけだぞ、こういうサービスは」
「は、はい。ありがとうございました」
 呼吸を整えつつ、礼を口にする。
 先生は答案用紙を元の場所に戻して、業務連絡を告げる。先ほどまでの隠微な空気はもうない。名残があるのは常に動いていた七海の方である。
「今回、赤点者は一人も居なかった。よって罰ゲームの掃除はなし。早く教室に戻って伝えてやるように」
「はい。分かりました」
「それと石倉」
「はい」
「試験で答えられなかった部分は、放課後、きっちりとその頭に叩き込むからな」
「え・・・・、あの、私だけですか」
 不安そうに口をすれば、何を当たり前のことを、という視線で見られた。
「前日まで付きっきりで教えてやったのに満点も取れんような人間、許せん」
「す、すみませんでした」
 殊勝に頭を下げ、七海は準備室から出た。出てすぐはゆっくりと歩き、階段のところまで出たところで、駆け下りた。降りてもすぐ走り、女子トイレに駆け込む。それから洗面台の蛇口を思いっきりひねり、口の中を濯いだ。何度もうがいして、ようやく顔を上げて目の前の鏡に気付く。
 目の前の少女は、泣きそうな顔でこっちを見返している。
 目元は潤んで、瞳は充血している。顎がガクガクしている感覚もある。
 大丈夫。自分が今までやっていた行為を見透かすような、変な顔はしていない。
「はぁ・・・・」
 早く教室に戻ろう。戻らないと変に思われる。
 トイレから出て、足早に隣の棟に向かう。七海がいる場所は特別棟と呼ばれ、受験生である三年生と、職員室や実験室、勉強に必要な特別教室が集められた棟で、音楽室や家庭科室なんかは、ぜんぶ七海が向かっている棟に収められている。二本の棟を結ぶのは各階の渡り廊下だけである。場所によっては巨大な大文字Hに見えるだろう。
 渡り廊下を進み、そこで階段に登り、上がってすぐのクラスに入った。七海が所属する3組である。
「遅れてごめん。今回は赤点、誰もいなかったって!」
「よっしゃー! でかした皆の衆!!」
「掃除無しー!」
「こずかい減額無しー!」
 男子も女子も同じだけ騒ぐ。
 七海にとっては、掃除してもいいから、補習は無しにしたかったところだとは、言えない。だから騒ぐクラスメイトを通り過ぎて、自分の席に戻った。
「七海、帰ってくるの遅かったじゃない。もしかして七海だけ赤点だったかもって皆で噂してたんだよ」
 前の席の友人、坂下優子が身体ごと振り向いて笑ってきた。その笑みには共犯者めいた香りがあった。七海もきっと同じ香りだろう笑みを返す。
「そんなことないよ。ただ、名前の部分がね」
「名前?」
「慌ててたから記入欄からはみ出して書いちゃってて、先生に小言言われてた」
「ドジー!」
 デコピンされた。
「すみません」
 ふざけて頭を下げた時、壁に付けられたステレオからチャイムが鳴った。五時限目の始まりの合図である。



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+あとがき+

 単品。教師×生徒です。教師二人と生徒二人以上、かな。
 そして何故かまた舞台が中学校です。高校だと教師と生徒って当たり前な感じがするんですよね。テレビでも低年齢化が進んでるって言ってたなぁ。

 理科教師・仲間省吾(なかま しょうご)、28歳。石倉七海(いしくら ななみ)、14歳。
 社会教師・宮城裕一郎(みやぎ ゆういちろう)、30歳。相手・真面目で大人しいタ イプの女生徒数人。
 坂下優子(さかした ゆうこ)、14歳。七海の奇妙な友人。宮城の相手の一人。

07.03.24

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