天使の箱庭


 人間は箱庭で飼われていた。
 人間は観察されていた。

 天使。

 それが観察する者の役職名。
 天使になるためのアカデミーで、入学初日に一人の人間を与えられ、卒業するその日まで観察が続けられる。
 人間は気付かない。
 自分の目元しか見えない人間は、空を見ようとしないから。
 空よりも上にあるその場所を、見える人間はいないから。

 だから・・・・・・気付いてしまった人間がいることを前提に、この試験は成り立っていない。

 ゆえに起こった事件とも言える。
 人間と天使が、恋をするという、第一級重科罪。

 罪に汚れてしまった翼は、はばたくことができない。
 それでも一緒にいたいと、強く願う。

 それが、物語の始まり。


■□■



 罪に汚された翼を浄化するためには、転生しなくてはならない。
 神は宣言なされた。

「いいか。これはチャンスではない。ましてや、同情でもないのだ。これは罰だ。未来永劫、途切れるまで、与えられる罰を。」

 何度転生しようとも、出会わず、恋に堕ちることなく、その生を全うすること。
 さもなくば、決して成就しない呪い。

 それでも! と天使は懇願した。
「いつの時代の貴方でも、私は必ず恋に落ちるでしょう」

 けっして! と青年は哀願した。
「一生を全うできなくとも、貴方に巡り逢いたい」


 貴方に恋しなくば、愛さなくば、自分たちは次の来世で手を取り、愛を語ることが出来るだろう。そして共に人生を歩むことが出来るだろう。

 それでも、恋せずにはいられない。
 貴方という存在が世界にあるのに、愛せずに後悔なく天寿を全うできるのものか。


 いついかなる時も、貴方だけを愛する。



 貴方の、魂を含めて、すべて。



| BACK |

+まえがき+

 すべて一話完結(前後もあり?)の連作です。同じ魂を持つ二人が主役ですが、転生した先での物語ばかりですので、名前や性別がころころ変わります。もちろん時代も変わります。けれどすべて悲恋。不幸な終り方をします。
 歴史が苦手なので現代とか未来とかになりそうです。
 だってこの二人、頑固なんだもん。天寿を全うしなくてもいいから愛させて! って叫んでるんだもん。

 番外編の永遠の片想いに関しては、長くなるので先に連載しましたが、本来ならこのシリーズに載せる予定のものでした。でも別に考えても良いのです。だから、番外編です。

06.04.30

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送