七月 act.2



 もうすぐ夏休みだ。でもちょっと待って。何か忘れている気がするよ。
 ほら、アレだよ。
 ・・・・期末試験ってヤツ。

「政治家なんて、大嫌いだ。外国人め、滅んでしまえ。タイムトラベル大賛成!」

 クラスメイトの一人が叫んでいた。
 政治家は公民。外国人は英語。でも最後は何だろう?
 クラスメイトの友達も判らなかったのか、尋ねていた。
「最後の何?」
「選択授業。歴史なの・・・・」
「ああ・・・・」
 あちこちで納得のため息が聞こえてきた。
 暗記物は確かに大変だ。
 わたしは選択で古典を選んだので、まぁ、まだ、マシ?
 根っからの理数系のわたしは、すこしでも苦手を克服しようと古典を選んだ。ここらへんが生真面目なわたしの損なところだ。おかげでいま、苦しめられている。
 願わくは試験日程で、暗記物が重ならないようにと、先生たちに祈るばかり。
 そして大概にして、生徒の思いと教師の思惑は不一致の道をたどる運命にある。
「よく言うじゃない? 百年後の学生は百年分の年号が増えるから、今の時代は未来よりもマシだって。そんなのもう生きてないんだから意味ないっての!」
 そうとう、彼女はたまっているらしい。いつもよりも口調が荒い。
 わたしは絡まれないように、小さくなってマーカーを引いた重要な単語の漢字を覚えるのに必死になっている。
 ただでさえ未室の不良宣言問題が平穏な日常を壊している。
 何も言えず、何も出来なかったことで、ずっと後悔が心臓を突き刺している。
 家で机に向かっていても、あの夜の未室の様子や会話を思い出してはため息をついている。
 わたしが今さら何をしても無駄だと言うことは判っているけれど、どうしようもない気持ちがせりあがって勉強の邪魔をしてくれる。

 ―――― だから、とわたしは言いたい。

 終業式に戻ってきた答案用紙と成績表。正確な数値は黙秘するとして。
 去年の成績と同じをキープしていることを喜ぶべきか。
 受験生になったのに、成績をキープしているだけで良いのか。
 未室のせいにするにしては、いつもどおりの自分らしい数字で。

「お母さんが受験するんじゃなくって美雪ちゃんが受験するんだから、お母さんは成績に関しては何も言わないからね?」

 母の信頼と笑顔が怖い今日この頃。
 夏休みは図書館に詰めようと心に決めた。
 同時に未室改心計画も心に決める。

 やっぱり、気になることがあるとこれからの勉強にも影響を受けちゃうかもしれないから。

 ―――― たぶん。



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10.03.07

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