紡がれる言葉は、



 俺の名前は山村康平。今年の四月に偏差値そこそこの私立高校に入学をはたした、容姿・性格・成績のすべてがそこそこ、つまり平均なみの男子生徒だ。名前だって、そこらへんにありそうな感じだし、身長も、やっぱそこそこ・・・・。

 何で俺がここまで『そこそこ』に拘るのか。それにはちゃんとした理由がある。
 これに限っては、親を恨みたくなる。いや、恨んだね、実際。

 俺には二つ上の兄貴がいる。同じ高校の三年生。そして受験生。
 兄の名前は龍平。「たっぺい」ではなく、「りゅうへい」と読む。なんか、漢字だけを見ていたらとても強そうで、何やらかっこいい。読み方も強そうだ。
 しかも本人、これまたかっこいい。俺の美意識が当てになるかは判らないけど、ウチの学校の女子の半分はこの兄にホの字だって言うから、やっぱカッコイイのかもしんない。
 身長も180あるし、成績だって毎回5番内に入る秀才。その上運動神経も良くて、教師の受けもいい優等生。なぜか部活はしていないけど、よく助っ人として練習試合に出ているせいか、注目度とか、有名度とか、半端じゃない。

 これで恨まない弟がいたら紹介してほしいね。

「さっきから何をぶつぶつ言ってるんだ?」
「兄貴の文句」
「賛美が聞こえてたように思うけどな」
 さらには地獄耳か。
「ならそうじゃないの。で、何の用?」
 翌日に近い、夜の11時に、兄が自室にやってきた。よくよく部屋の行き来が自由な兄弟ではあるけれど、こんな時間の行き来は、ほとんどない。
「ちょっと課題に息詰まってて・・・・。遅くなっちゃっちゃんだよ」
「・・・・・・・・・・で?」
「今日は週末だよ。ほら、だから康平も待っててくれたんだろ」
「こっちだって課題が・・・・・・っ!!」
 回転イスの座席をクルリと回され、270度回転した後、俺は兄の手によってベッドにダイブしていた。
「ちょ・・・・っ」
 言い掛けた文句は、上からのしかかってくる兄の瞳によって遮られる。
 目は口ほどに物を言う、と言うけれど、マジで兄貴はそれだ。
 俺自身、自分でも兄貴が何を考えているのか、本当は判らない。でも、身体の方は兄貴の意志を知り、忠実に行動を移す。
「ほら、もう黙って」
 すでに黙っている。けど俺は首肯く。
 兄貴の唇が、俺の唇を塞ぐ。最初は確かめるように、拒否がないと判ると、すぐさま深く長く、からめとってくる。
 まるで、唇しか見えていないみたいだ。
「ん・・・・、ふ・・・・っ」
 どちらのか判らない唾液が唇の端から漏れる。
 俺は、実はこれが嫌いだったりする。だってこれ、シーツに垂れるし、その上、自分の髪がその上にあるものだから・・・・。
 最中には何もかも判らなくなるけど、後でシーツを交換する時とか、もう一回シャワーを浴びたくなっちゃうんだよね。
「・・・・・・何考えてる?」
 違うことを考えていたのを、兄貴は的確に察する。
 何でだろう。何で判るんだろう。
「余裕っぽくて、嫌だな・・・・」
 学校や親の前じゃ見せない凶悪な表情をつくり、俺のパジャマのシャツに手をかける。
「あ、あにきっ。破くのはちょっと待・・・・っ」
「破かないよ。後でバレるから」
 そう言いつつも、ボタンが外れそうなほど性急に指が動く。
 下着まで脱がされた時、俺は初めて恥じらいを持つ。
 実の兄弟で、こういう事をする。それはとてもスリルをもたらしてくれる。俺のなかにも、兄貴のなかにも、罪悪感や道徳観念、それこそ禁忌という言葉はない。
 下腹部に兄の手が滑る。俺はシーツを掴んで待ち受けるままだ。
「ん・・・・、ハァ・・・・・・っ」
「ちょっと触っただけなのに、相変わらず感度はいいな」
 優しそうな声だったが、俺はある種の嫌な予感がした。そして、それは実行された。
「あああっ!」  何の助けも得ずに、兄はいきなり俺の蕾に人差し指を突っ込んできた。 「アアっ、やっ、動かさな…っ、ヤアアっ」
 兄貴の細くて長い指が、俺の蕾に根元まで押し込まれる。中を軽くかき混ぜて、ゆっくりと引き抜いていく。
 すんなりと、指は抽挿される。何度も行なう行為だけに、そこは久しぶりでも柔らかく弛んでいる。どれだけ抱かれてきたか、判る瞬間だ。
「はアアっ、はあっんっ、ンん…っ、ふあ…あ」
 何度も何度も繰り返す。
「アッ・・・・、アぁん・・・・っひああ・・・・・・」
 指が2本に増やされた。
「ああっ、苦し・・・・っ、やめ・・・・っ」
「そんな筈ないだろ。俺のモノだって入っちゃうくせに・・・・。入れるよ」
「い、ひあああぁぁぁぁ・・・・・・っ!!」
 拒否する間もなかった。
 いきなりの喪失感。そして突然の圧迫感。しかし、ひそかに望んでいたものだけに、俺の快感は頂点へと急ぐ。
「ああっ、兄貴・・・・っ!! 兄貴、指を・・・・・・!!」
 俺の中心を圧迫し、流れを止める憎い指。その持ち主の、憎い兄貴。
 それどころか、赤く色付く乳首に空いている手を這わし、抓ったり押しつぶしたり、どんどん感度を上げていく。
「く、苦し・・・・・・っ」
 痛い快感は、呼吸困難を引き起こす。
「兄貴、兄貴・・・・・・」
「一緒にイキたいから、まだダぁーメ」
 兄貴の呼吸も苦しそうだけど、まだぜんぜん余裕がある。
 下半身の律動を止める気配もなければ、指を外す気配もない。
 俺の中の敏感な部分を何度もこすり、何度も突き上げていく。生理的に出てくる涙は兄貴の唇に消える。
「ハッ、ハッ、ん、あああっ、・・・・やぁンっ、・・・・・ヒユッ」
「ん・・・・・・っ」
「あにき、あにきぃ〜っ、・・・・はアっ・・・・・やぁぁっ!!」
「その、苦しそうな顔とか、ん、・・・・すっげー好き」
「ヤァ! 言う・・・・なっ!! んんっ。も、やっ」
 我慢できなくて、俺は自ら手を延ばし、自分のものに搦める。そんなことをしても快感が増長されるだけで、苦しくなる一方だと分かっていても、止めることなんて出来ない。
「そんなに、イキたい・・・・?」
 返事する余裕もなく、コクコクと首肯く。兄貴は軽くグラインドするように、律動を早めてきた。規則正しい動きに、俺の腰も比例して揺れ動く。
 先走りでぬめるモノにも兄貴は刺激を繰り返す。
「く・・・・・・っ」
「ヤァ、はァァっ!!」
 最大限まで上げられていた快感は、すぐに解放に向かった。そのとたん、後方を締め付けてしまい、リアルに兄貴を感じてしまう。
 それが、さらなる快感を生み出してしまう。
「あ、あ、ああぁぁぁぁ ――――― っ!!」
 堪える事も出来ずに、俺は果ててしまった。果てる快感で、ビクビクと身体が痙攣を起こす。
 兄貴のものも、俺の中に果たされる。吹き出し続けるそれに、俺のものはすぐさま反応を返す。
 それに顔色を変えると、兄貴は的確にそれを読み取り、離れようとする俺を捕らえて離さない。
「ん・・・・」
「・・・・愛してるよ、康平」
「んん、オレ、もぉ・・・・・・っ」

 紡がれる言葉は、愛の言葉。
 それだけで、禁忌だとか、兄弟だとか、道徳観念だとか、キレイさっぱり忘れる。
 オレも愛してるよ、兄貴。
 この行為を、正当化させている間だけは・・・・・・。




書いて初めて後悔。難しかった。もう激しい描写はこれ以降書きません。
読むのは平気だけど、書くのはやっぱり別物です。勉強になりました。

H15/08/31

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